自分の身を守るための空手「剛柔流」大正区の喜屋武道場で【琉球空手】を知る

こんにちは!大正Labo西浦です。

大正区平尾地域のドンこと上村さんより、「琉球空手やってるおもろい奴がおるで」と情報をいただきました。平尾で空手を教えている方だとか。

リトル沖縄と言われている大正区ならでは!? 琉球空手のことも知りたいし、ほんでその人は一体誰なん?という興味津々の中取材を申し込みました。そのお方とは・・・

 

西村和幸さん

「あのー、僕は空手の先生ではないし、ただの門下生なんですけど…。僕なんかの話聞いても全然おもろないですけど… それでもいいですか?」という会話から始まりました。(とっても腰が低い方だなぁって印象)

え!? めっちゃ先生っぽいけど、ただの生徒!? どーゆこと? ますます謎めいてきましたが、ますます西村さんのことが知りたくなりました。

 

まずは西村さんの正体から・・・

  • 兵庫県の川西市出身、現在は大正区平尾在住
  • 会社の社長さん
  • 大正区平尾地区17町会の副会長さん
  • 大阪剛柔流館 喜屋式道場の門下生(剛柔流空手 四段)

やっと出てきました! 空手四段の持ち主。空手を始めたのはなんと39歳からなんだそうです。大人になってからなんですね。しかも川西から大正区に引っ越してきてから。まさに大正きっかけ!?

 

大正区に引っ越したきっかけは?

24年前、父の会社を継ぎ、拡張することになったのがきっかけです。

もともとは就職して愛知県の自動車関連の商社に勤めてたんですが、自営の父に「戻ってきてやらへんか?」と相談され、実家の会社を継ぐことになり川西に戻って働いてました。いわゆる2代目ですね。

会社が軌道に乗ってきた頃、拡張しようとなり、取引先も多かった大阪市内で物件を探していました。その時条件を満たした物件が、たまたま大正区で見つかったんです。これ以上はない!と、そこに決めました。

大阪市内ならどこでもよくて、どうしても大正区にこだわってたわけじゃないけど、たまたまです笑。ちょうど結婚した年でもあって、大正区で会社も新たにスタートしました。

そこから7年間は、会社しながら大正区にただ住んでるだけで、地域のことには何も参加もせず、町内会にも入らずでした。

 

--- ただ住んでるだけって! そう言われたら人類ほとんどの人がただ住んでるだけかもですね、笑。普通に仕事して生活して、それ以上に自分の住んでる地域で何が起こってるのかなんて、なかなか気にしないですよね。

空手とはいつ出会うのだろうか?

 

空手を始めたきっかけは?

実は、娘に護身術を習わせようと思ったことがきっかけなんです。
長女が小学生になり、この平尾周辺の空手道場や柔道場も家族で見学に行き、今お世話になってる喜屋武(きゃん)道場、ここに通うことを決めました。

最初は、7歳と4歳の娘2人だけを習わせるつもりだったんですが、うちの嫁さんが「私もやろかな」といってきましてね。3人とも習いに行って、僕だけ家で待ってるのも寂しいなと思って…じゃあ家族で習おう!となり、空手の道が開けました。

子供たちは部活があり、バイトがあり、就職して今はなかなか足を運べなくなりましたが、「黒帯を花嫁道具の1つとして渡せたらいいな」と思って始め、家族みんなで黒帯を取れたので、目標は達成できたかなと思います。

 

---さっきの言葉、ちょっと泣きそうになりました。お父さんが娘を思う気持ち・・・もう一度聞かせてください!!

「黒帯を花嫁道具の1つとして渡せたらいいなという目標を達成しました」

かっこよすぎます! そんな西村さん一家が通っている道場というのが、

 

 

大阪剛柔館 喜屋武道場 (きゃんどうじょう)

道場は、平尾にある大阪シティ信用金庫の向い、この建物の3階です。1階は「ぴないさーら」という飲食店。

西村一家がこの道場を選んだ理由、それはここの先生がユニークで、面白い先生だったから!

その館長こそが西村さんの大師匠であります、

 

 

喜屋武 邦夫 先生

琉球伝統空手 剛柔流国際空手古武道連盟、大阪剛柔館 喜屋武道場の館長さん。

鋭い眼光で一見怖そうな師匠。マスクをとったらもっと怖い!そんな平尾で一番の男前先生です。喜屋武先生のヒストリーがまた面白いのでご紹介します。

 

  • 沖縄本島の本部(もとぶ)の出身の恩歳72歳。
  • 酒もタバコもしない。(大酒飲みみたいな顔してますが、と笑)

  •  剛柔流空手 八段の持ち主。
  • こいつは将来危ないと家族に思われ、10歳から空手を習わされ、そこから空手を好きになる。
  • 大阪万博の2年前、日本の高度成長の真っ只中に来阪し、親戚がやってた西成の工場で働く。
  • 不景気になり、トラック運転手を経て知り合いの調理学校の先生に来いと言われてイタリアンのコックになる。(それまではインスタントラーメンも作ったことがない)

それからはコックをしながら空手を教えていたそうです。沖縄料理じゃなくてイタリアンてところがまた意外。いろんな繋がりがありご縁がありますね。とっても歴史を感じます。
お店はこの道場の1階にある「ぴないさーら」。今は息子さんたちに任せ、先生はモーニングをやってるそう。先生のイタリアン食べてみたい!!

そして空手を教えることになるまで、大阪に来て数年はいろんな想いがあったんだそう。喜屋武先生に聞いてみました。

 

琉球空手を教えることになったきっかけは?

働いていた工場を辞める頃、また空手をやりたいなーと思いながら大正区で道場を探してたのですが、どこも本来の「琉球空手」というものではなかったんです。当時いた先生に、道場を継ぐように言われてたんですが、自分が思う空手とは少し違うし、指導者にはなりたくなくて、5年くらい断ってました。

そんな時、本部がある沖縄の道場の人に「大正には沖縄空手がない、だからお前が指導者になって伝承していってほしい」と言われたんです。私が教えていかないと誰もやってくれないと気づき、そこからコックをしながら教えることになりました。

 

--- 素晴らしい!喜屋武先生が正しく伝承していただいたおかげで今があるんですね。本来の琉球空手って、私が思ってる空手とは違いそうですね。

 

 

琉球空手とは?

自分の身を守るために訓練すること

琉球空手は、先人たちが伝承してきた「型」の習得を重視しています。攻防一体となった無駄のない技が完璧なまでに構成されており、日々繰り返し練習することにより体力、忍耐力、精神力を嫌え上げるものです。

空手は沖縄から伝わったんですが、普通の空手とはやってることが違います。

勘違いして来られる方もいますが、ここは戦う場所じゃない、訓練する場所なんです。
空手は自分の身を守るために訓練するんです。かといって弱いわけじゃない。

最初に来られた時に「押忍」とか言ってくる人もいますが「押忍って何?」とこちらがビックリします。琉球空手に押忍はない!

 

子供のしつけはしません。

本当によく聞かれる質問なんですが、当道場はあくまで空手道場であり、お子さんのしつけ教室ではありません。

練習の最初と最後は礼をし、「お互い尊重しあいながらやりましょう」としていますが、礼儀作法のしつけというのはしてないです。礼儀は家庭で教えてくださいというスタンスです。当然、足りない部分はここでもやりますが、あくまで空手を教える上で障害となる行為にのみ対応するとお考えください。

 

 

開祖は、映画「ベストキッド」ミヤギのモデル宮城長順氏

(写真右:宮城長順氏/中:比嘉世幸氏/左:福元英吉氏)

沖縄空手には主要4流派を含め、数多くの流派が存在しますが、中でも「しょうりん流」「剛柔流」「上地流」が3大流派とされています。その中の「剛柔流」を作り上げた人が宮城長順さん。

固いものと柔らかいもの、剛と柔がぶつかっても潰れない。相手を痛めないように気遣いながら潰れないようにしなさい、そこを大事にする教えなんだそう。1984年に大ヒットした映画『ベストキッド』の主人公の少年ダニエルの師・ミヤギのモデルと言われています。

宮城長順氏から比嘉世幸氏へ、福元英吉氏へ、そして現在の喜屋武先生へと伝承されています。

「次はこの左に私の写真が来るでしょう、笑。」
「もし私が急にいなくなったら、西村さんに後を継いでもらいます!」と喜屋武先生。

そんな身内でもないのに、後を任せたいというくらい信頼があるんですね、西村さん!

 

 

道場頭が西村さん

なんと、この道場では西村さんが頭! もちろん先生も現役ですが、指導するのは西村さんなんだそうです。

「町内会の副会長をやってて、私の100倍信頼がある!」と喜屋武先生もおっしゃっていました。

いや、教えてる人やん!! と、ここで西村さんが何者かようやく分かりました。

ここの番長!いや「道場頭」ってすごい。 先生とは言わなくとも「教える人」に間違いはありませんでしたー。地域の方からも、道場の仲間からも、先生からも信頼の厚い方。

家族全員で黒帯を取り、目標を達成されてますが、

 

ずっと空手を続けてる理由は?

空手以外特に趣味がないんでね笑。

仕事終わって寝るだけやし、週2回、やっぱり日常とは違う別世界な感じがしていいんです。

道端で人を殴ったり蹴ったりはしませんが、ここでは殴ったり蹴ったりされた時の練習をするので、日常とは違うんです。

 

---そんな練習風景?どんなことをするのか見せていただきました。

 

 

琉球空手の稽古

「撃砕第一」という型を習ったり、丹田呼吸法と身体の絞めを学ぶ型があったり、鍛錬具を使った練習もあります。

サンドバック

ご存知の通り、しばくだけの道具だそうです笑。(人はしばきませんが)

 

たまには仲良く、サンドバックと背中を合わせちゃったり

 

悩みを相談したり・・・

そんな使い方をしていいかどうかは分かりませんが、時にはやさしく、お友達のような存在なんですね。

 

巻き藁

突きの指導や、拳や腕の鍛錬、個人練習に主に使用されます。

正面を突くことで、人差し指&中指の付け根関節を 鍛えます。こちらの道具は、外国人の門下生の手作りなんだそう。かなり頑丈です。

 

 

敵が来たら武器になるもの

馬蹄にメリケンサック

 

(かい)

普段は船を漕ぐための道具、オールですね。いざという時にはこれも武器になるんですね!

先端に重量が集中する分、威力があり、平べったい先端部分は砂をかける目潰しにも使われます。

 

トンファー

攻防共に素手に近いイメージで使用することができます。この武器も遠心力を利用して攻撃力を高めることが可能です。

めちゃカッコイイ!早業で棒が見えません。

 

ヌンチャク

とても有名な武器ですね。遠心力のおかげでとても攻撃力があります。紐の部分で相手の武器を巻きつけて奪うこともできるとか。

 

ヌンチャクの先に釜がついてるバージョン。笑顔でえらいものを出してこられました。これ見ただけで敵は逃げていきそうですね。

西村さんの奥さんも得意なんだとか! す、すごい。

 

他にも、かんざしだったり天秤棒だったり臼だったり…敵が来たら武器になる。まさか木の道具が武器だとは思われないですよね。

怪しまれないもの、そういう日常の道具を武器にして、敵が攻めてきたら守る、そういう歴史があるんですね。

その武器をきちんと使えるようになるためには、やっぱり体鍛えないと、なんですね。

 

 

そして、襲われたり捕まえられても払う、一瞬で腕を外す、これこそまさに護身術!!

娘さんでもこれできたら安心ですね。やっと空手のことが分かってきましたよ。そんな奥の深い「琉球空手」、

子供から大人まで、門下生募集中です!!

 

最後に

楽しい取材をありがとうございました!普段立ち入ることのない道場、そしていろんな技や武器、何よりも「琉球空手」というものを知ることができ、とても勉強になりました。

大正区は着飾らない街。等身大で居られるから心地よい、人情味は変わらずそのままであってほしいとおっしゃっていた西村さん。道場の仲間がきっかけで、PTAをしたり、地域に目を向けるようになり、だんだん友達の輪も広がっていったんだそうです。

世代間交流がすごくいい感じで、小学生が修学旅行に行くってなったら、80歳のおばあちゃんが自分の修学旅行の話してくれたり、それで交流ができてたり、そんな光景を街中で見かけたりすることが微笑ましく、世代間交流を活発にしていけたらなとおっしゃっていました。

まだまだ西村さんと喜屋武先生の面白さをつついていきたいです。これからも真実を追求すべく、大正区をラボしていきます。

 

【お邪魔したお店】
大阪剛柔館 喜屋武道場 (きゃんどうじょう)
住 所:大阪市大正区平尾4-20-15 (大阪シティバス 平尾下車スグ)
電話番号:06-6553-7030
営業時間 :
月・水 17:00~19:00
土 15:00〜19:00
(その他ご希望により受け付けます)

Nishiura

大正区研究中のライター西浦です。
大正区の魅力を楽しく分かりやすくお届けしていきます。

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