こんにちは、大正Laboライターの西浦です! いつの間にか11月に入っていました・・・ 暦の上では冬! 冬?って実感もないのですが今年も残すところあと2ヶ月を切ったことにビックリです。
さて先月、サレガマさんの店舗(古民家)の大家さんでもあり、古民家2階のAvalon Spiral(アバロンスパイラル)のオーナーでもある三上さんにお話を聞かせていただきました。
お会いした時は、まだ三上さんの正体を知らず、のほほんと軽い気持ちで取材を申し込ませていただいたのですが、いざ2階に上がった瞬間、思わず立ち止まってしまいました・・・・
(この階段を上るとお店です)
ずらりと並んだこの物体・・・
え!? 何屋さん???
てっきり植物や木の雑貨、家具を販売されてるお店と思い込んでいたのです。
どんなお店か調べずに話を聞くという…とっても失礼な話ですが、ますます興味津々で、三上さんのお話にどんどん引き込まれていきました。
西日本唯一の「ディジュリドゥ専門店」
大正区で2005年から営業されているディジュリドゥ専門店のAvalon Spiral(アバロンスパイラル)さんです。「ディジュリドゥ」と聞いてもピンとこない方も多いのではないでしょうか。
ディジュリドゥ(Didgeridoo, Didjeridu)とは
オーストラリア大陸の先住民アボリジニの金管楽器です。木製ではあるが発音原理から木管楽器ではなく金管楽器に分類されます。シロアリに食われて筒状になったユーカリの木から作られています。
そう聞くと、「あー聞いたことあるかも!」って方もいますでしょうか。私もオーストラリアのお土産で見て、存在を知ってはいたのですが、まさか日本にこんなお店があったとはビックリ仰天です!!
オーナーの三上 賢治さん
大正区泉尾生まれ、現在も大正区にお住まいです。
約20年前、ディジュリドゥをもっと色んな人に知ってもらいたい!という想いから、当時人気のエリア”アメリカ村”にお店を構え3年半営業されていました。その間出来た顧客様はなんと1,000人!日本全国、いや世界中にディジュリドゥファンがいる!台湾、トルコ、スペインから、日本観光ついでに習いに来た人も多く、今は世界中広まっています。
失礼ながら、ディジュリドゥを使っている方がそんなにおられるとは驚きでした。
「アメ村がどんどん騒がしくなり、その中にお店があるのがしんどくなりました。アメ村に来たついでに寄ってもらうというよりは、わざわざ”ディジュリドゥ専門店”を調べて来ていただくことがほとんどでしたので、ここじゃなくてもいいかな?という思いと、移転してもやっていける自信があったので、生まれ育った大正区に移転しました。」
三上さんの正体
お店を経営しながら、自らディジュリドゥの演奏をしたり、レッスン講師でもあります。そして、追手門学院大学でも約10年、名古屋芸術大学のワールドミュージッククラスの非常勤講師としても教えに行ってるそうです。
オーストラリアの先住民アボリジニの文化を伝えながら、楽器や鳴らし方を教えたり。小学校、中学校、高校、大学ででオーストラリア文化の一つとして、依頼があれば全国に講演にも行かれています。
「最近は民族楽器というジャンルが取りあげられるようになりました。音符を扱わない世界ですね。音符をマスターしなきゃ音楽家としてうやっていけないのか? 決してそうじゃないよということも私たちが伝えていってるところでもあります。」
全国の若い世代にこの伝統文化を伝えてくれるのはありがたいですね!私もとても勉強になりました。
ディジュリドゥを始めたきっかけは?
(先住民のマスター)
27年前にこの楽器に出会いました。それまではカメラマンでした。
友人が音楽家で、イギリスのフェスに出演するのでカメラマンとして同行取材を依頼され参加しました。その時にヨーロッパで流行りだしたのが “ディジュリドゥ”で、たくさんの方が持っていたのを見たのが始まりです。その場で、いろんなミュージシャンと共にディジュリドゥを借りてみたのですが、ミュージシャンでさえ音を出すことができませんでした。そんな中、唯一私だけ音が出たのです!!!まさにそれがきっかけです。
それまでは、自分だけカメラマンで、外国では言葉が通じないと会話できない。でもミュージシャンは言葉が通じなくても音で通じるものがありました。それがとても羨ましくて。ただそれを撮ることしかできず寂しい思いをしていたのですが、自分だけ音がなったことで、自分にもできることがあったんだ!と嬉しくなり、そこからハマっていきましたね。
カメラマン当時の写真はフィルムの仕事でしたので、デジタルに移行するのはものすごい投資が必要でした。悪い画素数ですごい金額を払わなければならず… それを機にジョブチェンジできました。今思えばいいきっかけでしたね。
イギリスでディジュリドゥに出会い、そこから音楽家の友人とバンドを組むようになりました。ディジュリドゥと民族楽器のバンドで「天空オーケストラ」という名前、リーダー岡野弘幹さん。
元YMOの細野晴臣さんと演奏したこともあり、セッションで今も活動してます。
当時ディジュリドゥをやってる人は日本に5人しかいなかった。YouTubeもインターネットもない時代。バーチャルがなかったので自分で体験したことを忠実に再現するという時代でした。自宅でやっていたのですが、教えて欲しいという方がいて、教えるようになったら商品が欲しいと。オーストラリアから仕入れて家で売ってたのですが、いろんな人が来るようになったので、お店をやらなきゃなと思い始めました。
それまではバンド活動もやってたのですが、真剣に習おうと思い2000年にバンドを抜け、オーストラリアのマスターと言われる先住民にディジュリドゥを習いに行きました。木を切り倒すことからの作り方も、鳴らし方も。それからお店を開きました。
そこから何度もアーネムランドに足を運んでいます。1回行くと2、3週間で仕入れもして、ディジュリドゥも学びます。 誰かが広めてくれるのを待ってても仕方がないので、そこは自分がやらなあかん!という思いで広めて行きました。現地でいろんなマスターに会えたことが財産です。
有名な音楽家さん達との繋がり、先住民からの教え、偉大すぎです!そして何と言ってもその行動力が素晴らしいです!! 経験は宝物ですね!
ディジュリドゥレッスン
レッスンは20年以上教えてます。今はソーシャルディスタンスを保ちながら。30代から70代の方まで、大阪だけでなく全国から来られています。1階のお店のオーナーさんも昔から習われていますよ。
声がキレイであれば音も良くなります。呼吸が音になるので、歌が音になる。ただ吹いてるだけではない、吹くというよりは、口笛のような口ばしの感覚です。
昔は男性が多かったのですが今は女性が多いです。ヨガやってる方とか。丹田呼吸も腹式呼吸も瞑想もするので、ものすごく体に良くヘルスケアでも人気です。今はご自身のケアのために習われる方も多いです。レッスン前にはボイストレーニングで響く体を準備して始めます。
オーストラリアで買って鳴らし方が分からず来られる方もいます。そんな方には、チューニングしたり、均等な厚さにしたり、マウスピースを整えたりします。土産物は飾りなので限界はありますが・・・
チューニングの仕方も、木を切り倒すことからの作り方も教わってきたそうで、、安心してお任せできますね。
ディジュリドゥってお高いんでしょ?
竹のディジュリドゥ(軽くて割れにくい)は1万円からあります!
本格的なユーカリのディジュリドゥは5万円〜。最上級は20万以上もあります。
オーストラリアで販売してるディジュリドゥの大半は偽物なんですよ。
ディジュリドゥだけでなくブーメランやアボリジナル関連は、ほとんどがインドネシアで作られています。アボリジニのものなのに、アボリジニに返還されてない状態で、良くない環境になっているのが現状です。
伝統ある本物のディジュリドゥは「アーネムランド産」
オーストラリアでも伝統のある地域ってものすごい小さなエリアなんです。結構奥地で「アーネムランド(Arnhemland)」というエリアです。伝統のある本物のディジュリドゥを手に入れようとなると、そこに行かなければ手に入らないんです。うちの商品はそこで作ってもらってます。
子供から大人まで、伝統を受け継いで作っています。政府公認の店があり彼らの文化を維持するために、ディジュリドゥだけでなくて彫刻やアートも資本になるよう彼らの財産として管理されるように、作品を買い取ってくれます。運営がうまくなっていくと政府の運営がアボリジニに譲渡されて、彼らだけでやっていけるような仕組みになっています。
北海道と四国を足した大きさ。アボリジニに返還されたエリアとしてはオーストラリアで一番大きいです。
街があり、ホテル、スーパー、銀行もあるんです。彼らのテリトリーの中にコミュニティとして居住区も作っています。そこを離れると自然しかない。そこに住むのも自由だし、季節ごとに移住するのも自由です。
アーネムランド、初めて聞きました。アボリジニのエリアにホテルもあるということにも驚きです。訪問者とアボリジニとの生活、とても興味があります。
アボリジニの伝統は素晴らしい!
もともと商売する概念、働くという概念がなく、お腹がすいたら狩りに行き、文字も持たない人たちなんです。文字を持つと書物として持たなければならないので、狩猟採集してると邪魔なんです。なので彼らは全て記憶していきます。伝承ですね。ただ全ての伝統を受け継ぐと覚えることが多くなるので、グループごとに項目を分けて伝承していってます。
そういう生き方なので、戦争するとグループがなくなって知識もなくなってしまう。だから彼らは戦争をしなかったのです。そうして何万年も伝統を受け継ぐことができたと言われています。
儀式もちゃんとあります。彼らにとって一番大事な儀式はお葬式、魂を送るということなんです。それ以外の大事な儀式も受け継いでいけるよう常にいろんな祭りもあるのです。
最短でも1500年前、氷河期の頃から移り住んでいる人たちもいて、文化を変えずにずっと生きてきてるので、すごい伝統を持っているんです。
デザインはアボリジニのオリジナルですか?
彼らは勝手に模様を考えているのではなく、受け継いできた模様を描いています。アボリジニのグループによって歌も違うし模様も違う。どこのグループの模様か分かるようになっています。太さによっても長さによっても音が違う。長くなれば低い音、短のは高い音が出ます。
シロアリが穴を開けたユーカリの木を見つけてくるので、人間だけでは作れない楽器なんです! 半年雨季、半年乾季、ここのシロアリは真ん中の芯だけ食べてくれ、ちくわのように綺麗な穴を開けてくれるんです。これはこの地域だけの生態系のシロアリ。
外側の皮は剥いで、厚みを整えて、伝統的な絵を描いていきます。
今はアクリル絵の具を使いますが、昔は岩が顔料になり、顔料を水で溶いて動物の油を混ぜで定着させていました。白、黒、赤茶色、黄色の4色の組み合わせで作られています。4色でもすごく鮮やかです!
アボリジナル・アートも人気です!
アボリジナル・アート素敵ですね。こちらは、ウルルの地域で書かれた点画。枝にインクつけてハンコのように点画になったそうです。
オーストラリアも地域によって絵の書き方が違ます。全てに意味があり、文字の代わりに絵や模様でいろんなことを伝えてます。精神力が高く、繊細で、最後まで意識が途切れてない。守ってきたものを表現してるのでとても意識が高い絵です。政府公認のアートセンターで仕入れています。文化を維持するための目的である”どこの誰が作ったもの”かが分かるので安心な商品です。
絵からパワーやエネルギーが感じられますね。ずっと見ていられるし、なんだか愛着が湧いてきます。
バーンスリン、シンギングボール、インドの横笛も。ディジュリドゥだけでなく他の楽器も、ご縁があったミュージシャンの委託で販売されています。
癒しの植物たちも人気ですよ。
ロールプレイングゲームのようなお店を作りたかった
なるべく手作りでお迎えしたいという想いで、古民家を改装し1年半かけてお店を作り上げたそうです。作りながら商品を置いて、レッスンして、色んな方に手伝ってもらいながら少しずつ完成していったそうです。
「1階に飲食店があって、2階に癒しにつながる道具がある、”ロールプレイングゲームのようなお店”を作りたかったんです! ここに一晩寝て元気になれる宿泊施設があればもっと最高だったのですが。」
とおっしゃってましたが、宿泊以外は夢の施設が完成されてますね!!
下で食事して、上でレッスンして、また下でお茶して1日過ごされる方も多いそうです。1階でタロットリーディングが開催されてる日も。サロンのような場所としてもスペースを提供されています。興味のある方は連絡してみてくださいね。
大正区について、お聞きしてみました。
昔とだいぶ変わりましたね。イオンができて商店がどんどん潰れ、空き店舗が増えていきましたね。。。でも空き店舗を手放したり貸すことはしないので、どんどん過疎化していくしかない。活性化しない。大手が個人商店を潰していってる気がしますね。便利さを追求するがあまりにどんどん失っていくものも多いのではないでしょうか。
最後に
「日本の若い方たちにも”イメージを形にできるスキル”を持って欲しい。手作りしたり、壊れたら直してまた使う、そんな習慣があると自然とスキルも上がるはずです。 伝統を守って生きているアボリジニは1万年後も自然と共に生きてるんだと思います。その時、日本はどうなっているのでしょうか。これからもそんな生き方や伝統を伝えていきたい。」と三上さんはおっしゃっていました。
便利になった日本ですが、アボリジニの文化も見習いたいですね。こういう時代だからこそ、これからの時代に向けてこそ、物を大切にしたり、直して長く使ったり、昔からの日本の伝統や文化を受け継ぐ人が増えていってくれたらいいなと思いました。
三上さん、とってもとっても壮大な、素敵なお話ありがとうございました。
【お邪魔したお店】
西日本唯一のディジュリドゥ専門店Avalon Spiral(アバロンスパイラル)
住 所:大阪市大正区三軒家東1-20-19-2F
電 話:06-4394-2338
営業時間 : 11:00~19:00※今は予約制
定休日:火曜休 ※ライブ出演等で臨時休業あり